佐々木の思い出

テストが終わった。
後半集中力が無くなってきて、
あのやる気はなんだったの?!っていう部分もあった。
でもともかく今は結果が出るまで気にしてもしかたない。

今年が終わるまでにやっておきたいことをやるべく走らないと!


試験期間中、佐々木のことが度々頭に浮かんできた。
ただの現実逃避かな。
忘れていた沢山のことを思い出した。

一年生のとき、
学校で干し柿を作ったときのこと。
私は練習をして行って、自分ではそこそこ剥けるようになったなぁと剥いていたら、
となりで佐々木は横にクルクルと剥くのではなく、
縦に皮をすいすい剥いている!
早いし綺麗だし、
負けたと思った。
あの時はそうでもなかったけれど、今の私は柿が大好き。

佐々木のお母さんは何とも言えない不思議な雰囲気を持っている方だったこと。
黒い服を着ているのしか見たことが無い気がする。
お化粧っけが無くてでも凄く引き付けられるものがあった。
綺麗な方だった。
他の同級生のお母さんには全くいないタイプ。私はお話したことは無い…たぶん。
家が近かったからスーパーとかで見かけていたかなー。


一方佐々木はうちの母や姉に好かれていた。
あんなに小憎らしいのに大人から見ると可愛く見えたのだろう。今では理解できる。
佐々木には屈託が無かった。

でもお互いの家に入ったことは無い。
私の家のガレージにいることがあった。
それも低学年の間少しだけ。


なんせあの初めて遊んだ日の翌日には私は女の子と友達になり、その子とばかり遊ぶようになったから、本当にあれきり遊んだ記憶は無い。
もしかしてガレージで待っていたかも?いやないない。佐々木だって他に友達いたもの。

それより気になるのは、
高学年の佐々木の記憶があまりにも希薄なこと。
受験勉強に忙しくて、
その存在感を潜めていたのかなと考えてみた。
いや、私が他のことに目を向け過ぎていたからか。好きな男の子がいたし。その子ばかり見ていたなー

6年生の夏休み、
私は母とニューヨークに旅行しに行った。姉が長期で旅行に行っているので着いていくような軽い気持ちで。
その時現地に住む姉の友人のお兄さんにお会いして、
母がトイレに行っているか何かの時に、二人になり話した時、

私は何を思ったのか、
佐々木のグチをお兄さんにしたんだ。勉強が出来るからって学校の勉強を馬鹿にしている奴がいるの、なんか嫌なのだ、と。

その時教えてもらった言葉が『能ある鷹は爪を隠す』、
どっちのことを言っているのかよくわからなかったけれど、
そうだよね!と納得した。

異国に行ってまで思い出す程むかついていたのか、いや多分話すことがそんなになかったからしゃべったのかな。

当時の私は中学受験をするつもりだったのを途中で塾を辞めて、そんなことより卒業したら引っ越すから、今の学校の友達と思い出を作ることの方が大切だって強く思っていたから、
そういう佐々木の態度が気に入らなかったのは確か。

それにしても!
佐々木が他県の中学を受け、
合格してそっちに行くのなんて、
本当に卒業直前に知った。
一人ずつ起立して「〇〇中学に行きます」と発表していったときだ。
有名なところらしく皆凄いって言っていたけど、私はその学校を知らなかったし自分が県内の20キロ程度しか離れていないところに引っ越すことばかりに悩んでいた頃だったので彼のことを気にとめる余裕はなかった。
ひょうひょうとしているから寂しそうに見えなかったし、立派なことを成し遂げたんだものね。その価値は私には全く理解できるものではなかったけれど…。

今考えると、12歳から寮とはいえ親元を離れ一人で暮らすなんて偉いなーとつくづく思う。
私なんて二十歳を過ぎても上手く一人で暮らせず、
とっても寂しい思いをしてきたっていうのに!
佐々木は大丈夫だったのだろうか…。


そうそう、まだ佐々木の夢を見る前に、
ヘッセの『知と愛』を読んでいた。まだ読みかけでテストだから中断したけれど、
主人公のゴルトムントも中学生くらいの年齢に修道院の寮に入って暮らしていたから、重なるような気がして、結び付きを感じた。
ここまでくると完全に妄想だ。

佐々木は寮でもきっとひょうひょうと暮らしたと思う。
小学校のことなんてとっとと忘れて。そうであって欲しい。

うーん、それにしても何故こんなにとらわれているのだろう。何か私のこれからにヒントとなるようなことのような気がしている。何かを佐々木が啓示しているのでは?
彼の思い出に会いに行ってみたい。
できることなら本人にもまた会ってみたい。
でも同級生に聞いて連絡を取って会う…そこまでしなくていいや。厚かましい。
でも会いたい。

聞きたいこと、でもどうでもいいようなことがいっぱいある。
佐々木が持っていたゲーム機の名前は何だったっけ?
セガサターンでもプレステでも無いの…これが1番気になる。
卒業式の日だっけか、給食のレシピ集が配られて、
佐々木は一人暮らしになるからこりゃいいやと、これ見て作るよって喜んでいたけど作ったかい?
料理は得意そうだ。
あと何故私を遊びに誘ったの?
男子と間違えてたんだろうと私は考えてるよ…。

などなど…。


また同級会があればいいのだけどなー…二年前に集まって島にキャンプに行くって話になっていたけれど、
私は行かなかった。
皆もうほとんど就職して集まるのは難しくなっただろうな。

誰かまた賑やかな奴らが企画してくれないかな。
私はほとんど連絡先知らないからどうにもね。


こんだけ語ったから一旦佐々木のことは忘れられそう。
色々書いたから、もし佐々木が読んで、こんな話公開しないでくれと思ったらコメント下さい。


最後に、感じ悪い奴だったけど私を否定するようなことは言わない人だった。
今思うと全部可愛いものだ。
でも同時に凄く悲しいよ。


こんな現実離れした話をして大丈夫でしょうか。
これでもちゃんと現実も見て生きている普通の22歳平均女性です…。
相葉ちゃんが大好きです…。